外科医の拡大鏡の向こうには「直径数センチの小宇宙」が展開します。
この小さくも深遠なる世界では、存在している空間から支配している空間が切り取られて術者はそこに全身全霊を注ぎこみます。とくに体外循環中にできるだけ能率的で正確な手術が要求される心臓外科の術者は、船外作業をする宇宙飛行士さながらであり、人工心肺からの離脱はあたかも地球への生還、という感じでありましょうか。その、外科医の意識が集中している中心の部分を一枚の図にして伝えようというわけであります。
図にはツボの部分があって、そこを一所懸命描いていると解剖学的なあるいは手術手技上の重要な点があらためて認識されることがあります。こうして実はイラストにはいいたいことが文章よりもしっかり、しかもこっそり込められているのです。
また、そのイラストを誰かが見ているうちにふとあるヒントになる何かが見つかったり、頭に浮かんだりすることがあるかもしれません。もしそうなれば大きな役割を果たすことになるでしょう。デジカメで記録をとればいい、という方もあるでしょうが術者の視線がいろんな方向から入ってやっと全貌を把握できるようなときは写真には撮れません。
また、術野には余計なものがいっぱいあるので写真は補助的な情報にはなりますが適切な記録にはなりません。空間的にも時間的にも必要なところだけ示し、不要なものは背景として消す、そして、見たとき瞬時にアナトミーがイメージでき手術の反芻と反省ができる、これがイラストのチカラです。
私は現在、地域医療としての循環器科診療と心臓血管外科手術に携わっておりますが、それらを全うしつつ、さらに外科医の心血を注ぐ意識の中心を画にすることをライフワークにできればこの上ない喜びであります。
今後も皆様のお役に立つような、そして次を見るのがワクワクするような画が描けるように日々努力したいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
末次文祥(すえつぐふみなが)
Plofile
昭和39年東京都生まれ。
平成3年佐賀医科大学医学部卒。
卒後東京女子医科大学日本心臓血圧研究所外科にて研修。
平成12年佐賀医科大学胸部外科研究生および産業医科大学第二外科勤務を経て、
現在開院6年目の医療法人末次医院(北九州市八幡西区)にて循環器診療に携わる。
また福岡新水巻病院にて心臓血管外科医として勤務、
傍ら「手術図制作研究所」主宰として手術イラスト等を手がける。
心臓血管外科専門医。循環器専門医。
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